質屋は想いであずかり処

今日は本のご紹介です。
ポプラ文庫発行の
「想いであずかり処 にじや質店」片島麦子著です。
”満月の夜だけ開店する「にじや質店」。
そこはある条件を満たせば、
お金を貸してくれる代わりに
「願いを一つだけ叶えてくれる」質屋だという。
そんな不思議なお店で働くことになった
女の子・いろはと、
どうしても叶えたい願いを抱えるお客たちが織りなす、
優しく温かい物語。”
現実にはありませんが、ほっこりする質屋さんですね。

でも、現実の質屋が
「想いであずかり処」であると
言えなくはないと思います。
例えば、当店をご利用いただいている
あるお客様は、
今は亡き旦那様からプレゼントされた指輪を
質入れしていただきます。
年金支給日までの数日間の
資金繰りに困った時にお持ちいただきますが、
「この指輪があるといざという時に助かるわ。主人に感謝ね。」
とよくおっしゃいます。

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あるお客様は
勤続30年記念で会社から頂いた純金製金杯を
質入れしていただいていました。
そのお客様は、
病気の息子さんがいて、
医療費がかさんで生活費が厳しくなった時に
利用していただいていました。
女手一つで息子さんを育て上げ、
成人してからは病気の看病もしていました。
会社から貰った栄誉の品が、
生活の助けになっていました。
このような想い出の詰まった品物を
お預かりするという点では、
現実の質屋も「想いであずかり処」と言えます。
質屋をご利用するお客様の中には、
身内や友人には話せない事を抱えて
ご利用されるお客様もいらっしゃいます。
そんな時に、
全く関係のない質屋の店主に話をしていただいて、
スッキリしてお帰り頂くお客様もいらっしゃいます。
一昔前の質屋の話に感じられますが、
質のヤマカワは
これからも「想いであずかり処」として
お客様の「想い」も一緒に
お預かりできる質屋であり続けたいと思います。

 あと、この本の「にじや質店」
という名前にはこんな意味があります。
にじやの「にじ」は漢字では「虹」。
虹は七色です。
ということは「虹」は「七(しち)」です。
「にじや」→「しちや」と
おしゃれな隠語隠されていました。

実は、質屋の歴史において
このような隠語を使う時代がありました。
質屋を「七つ屋」と呼んでいた時代もあったんです。
ウィキペディアからの抜粋です。
”庶民の間の一般的な金融であった当時、
質屋通いが世間体が悪いとの思いから、
「質」と「七」(しち)を掛けた
「七つ屋」「セブン屋」「セブン銀行」
「一六(いちろく)銀行」などの隠語が用いられた。”
とあります。
今となっては、実際に「セブン銀行」が存在しますので
質屋をセブン銀行とは言えませんが、
「七つ屋」なら逆に新しい感じで使っていただけるかもしれません。
例えば
「今日は現金が足りないので七つ屋に行ってくるわ」
みたいな感じで使っていただいたら
他人には知られずに
友人との会話が成り立ちます。
まだまだマイナスのイメージのある質屋ですから
このような呼び名を使っていただくのも質屋人としてはうれしいです。