マイホームでも残クレか

国土交通省が、住宅購入にも残価設定型(いわゆる残クレ)の仕組みを導入しようとしています。
死亡時などに売却することを前提に残価を設定し、その分の返済を免除することで、毎月の負担を軽くし、住宅価格の高騰下でもマイホーム購入のハードルを下げる狙いがあるそうです。
(日経新聞より)

残クレといえば、まず思い浮かぶのはスマホです。
携帯会社が「2年後に返却すれば負担が軽くなる」というプログラムを始めてから、
一気に主流の買い方になりましたよね。
自動車では「残クレアルファード」という言葉が流行るほど
当たり前の購入方法になりました。

残クレとは、あらかじめ商品の将来価値(残価)を決め、
その分を除いた金額だけを分割で支払う方法です。
30年前、私たちが若かった頃には、ただローンを組んで購入するだけでしたが、
今や車もスマホも「残価をどう設定するか」が購入のポイントになっています。

もちろん利点もあります。
設定した残価分だけ借入額が減るため、より高額な商品に手が届きやすくなります。
しかしその一方で、支払いが滞れば一気に負債が膨らんだり、
最悪の場合は自己破産など、生活を揺るがすリスクも抱えています。

住宅分野にはすでに
・リバースモーゲージ
・リースバック
・フラット50
といった仕組みが存在します。
ここに残クレ住宅ローンまで加わってくると、
「結局、どれが自分にとって正しい選択なのか」
ますますわかりづらくなっていくでしょう。

質屋業を営む私たちは、
「財布がピンチの時にご利用ください」とお伝えしてきました。
しかし、残クレのように“返す前提のローン”が増えると、
手元に残る資産が減り、
いざという時に質屋を利用しにくくなる面もあります。

質屋は昔ながらの商売というイメージが強く、
確かに斜陽産業と言われることもあります。
それでも私は、
どれだけ金融商品が複雑になっても、
「手元のモノを使ってその場をしのぐ」
というシンプルな選択肢は、
必ず必要とされる
と感じています。

高額なローンや複雑な仕組みが増えれば増えるほど、
逆に
「無理な借金をせず、持っている物を安全に預けて必要な分だけ現金化する」
という質屋の価値は、
むしろ見直されるべきではないでしょうか。

これからの時代、質屋に求められるのは
「お金の不安を抱えた人の、最後ではなく
“最初の”相談相手になること」
だと思っています。
私もファイナンシャルプランナー2級の資格を取りました。
世間話ついでに
少しでもお客様の役に立てるように日々精進してまいります。